
アイルランドは、製薬業界の長年の中心地であり、細胞・遺伝子治療(CGT)の発展においても世界をリードする存在です。医薬品輸出で世界第3位を誇る同国は、製薬企業トップ10のうち8社が拠点を構えるほか、革新的な研究、製造、臨床ネットワークを構築しています。このエコシステムが、次世代医療の基盤を支えています。
主なポイント
1. エコシステムの強み
産業・研究の連携:アイルランドは教育機関、製薬企業、病院との密接な協力体制を有し、効率的な研究開発と製造プロセスを実現しています。
NIBRTのリーダーシップ:アイルランド国立バイオプロセス研究研修所(NIBRT)は、製造プロセスの改善や専門人材の育成に注力し、約5万人へのトレーニングを実施。
2. 細胞・遺伝子治療の進展
個別化医療への挑戦:患者自身の細胞を利用した治療は、画期的な一方で製造プロセスが複雑。NIBRTは、製造効率化のための研究・技術革新を進めています。
CAR-T療法とオルガノイド開発:トリニティ・カレッジ・ダブリンを中心に、新たな治療ターゲットや3Dモデルを活用した個別化治療の臨床応用が進行中です。
3. 国際的な競争優位性
多国籍製薬企業の進出:BioMarinやMeiraGTxといった企業がアイルランドに製造拠点を設立し、遺伝子治療薬の製造能力を強化しています。シャノンのMeiraGTx施設では、既存の英国施設の4倍の製造能力を達成しました。
グローバル市場の成長:2030年には、細胞・遺伝子治療が医薬品売上高の5~7%を占めると予測されており、アイルランドはその拠点としての地位を確立しています。
4. 多様性がもたらす研究の優位性
アイルランドの多文化社会により、幅広い遺伝子プロファイルを代表するデータバンクが形成可能。これが、国際的に関連性の高い治療法の開発を促進しています。
アイルランドは、製薬業界の伝統的な拠点であるだけでなく、細胞・遺伝子治療のグローバルな中核拠点として成長しています。政府の支援、先進的な研究基盤、多国籍企業との連携により、次世代医療の未来を切り拓く最前線に立ち続けています。